2005-06-10
塚本邦雄氏逝く - ましてしのばゆ
今回は全くの私事にて、検索エンジンとはまったく関係のないトピックで申し訳ない。
最近は、二階の書斎にこもって仕事をしているのだが、学生時代から蒐集した千余冊の蔵書を詰め込んだ2つの書棚を背にしている。
マルクスの資本論のドイツ語版からはじまり、ヘーゲルやサルトルを中心とした哲学、古事記や日本書紀の日本古代や新古今和歌集などの日本古典、ドストエフスキーから阿部公房や三島由紀夫などの内外の文学など、かなり金を突っ込み時間を割いた財産である。
さらに前方には、数々のコミック類や、はてはブルックナーのシンフォニーの楽譜まで揃っていたりする。
蔵書の中でも宝物は、吉本隆明と塚本邦雄の本たちである。
前衛歌人、逝く
昨日(2005-06-09)、その塚本邦雄氏が亡くなったという…
初めて買った氏の歌集「されど遊星」の"うた"は衝撃的だった。
- あはれ知命の命知らざれば束の閒の秋銀箔のごとく滿ちたり
- 往きて還らばすなはち明日の思ひ出となさむ冥府に實るからたち
また「綠色研究」は、言葉が創造するシュールな宇宙に身悶えさせられる。
- 雉食へばましてしのばゆ再た娶りあかあかと冬も半裸のピカソ
- 出埃及記とや 群青の海さして乳母車うしろむきに走る
最後に、氏の自選歌集「寵歌」から、巻頭巻末の歌を載せよう。
- 眼裏に悲しみの色湛へつつ壮んなる夏の花に對へり(透明文法)
- 歌ありし日の夕つかた望みける山櫻なりふるへやまずも(詩歌變)
氏にとって特別な存在であっただろう、当時の前衛歌人藤原定家の名歌を、氏の「定家百首」から四首添えて冥福を祈りたい。
- 見渡せば花ももみぢもなかりけり浦のとまやのあきの夕ぐれ
- 霜まよふそらにしをれし雁が音のかへるつばさに春雨ぞ降る
- ひとりぬる山鳥の尾のしだり尾に霜おきまよふ床のつきかげ
- 尋ね見るつらき心の奥の海よ潮干の潟のいふかひもなし
2005-06-10 07:10 PM



